50歳を過ぎて農家になろうと思った理由
私は元々、長い間建設業、いわゆる工務店を経営しておったんですが、
思うところがありまして、5年ほど前に『これからは農業で生きていく!』と決めて農家に転身しました。
そのきっかけはというと、工務店時代に建物の空気環境が原因で人間に健康被害を及ぼす、いわゆるシックハウス問題に取り組んだことやったんです。
ある化学物質過敏症の方から、「化学物質のない家」を建てて欲しいという依頼がありまして、
それを実現するためにありとあらゆる情報を集めて徹底的に研究して、なんとかそのお客さんが住める「化学物質のない家」を建てることができたんですが、
その時にいろいろ勉強した中で、人工的につくられた化学物質がいかに人間の健康に悪影響を及ぼしているか、病気の原因になっているかを知りました。
それは住宅の空気環境の問題だけではなくて、飲んだり食べたりする食品に含まれる化学物質、いわゆる食品添加物や農薬の問題が非常に大きいということも同時に知ったわけです。
その時に『これは空気環境だけやっててもラチあかん!まずはまともな食品を作ることが先決や!』と考えるようになって、思い切って農家になろう!と決断したわけです。
もちろんですが、体に悪い化学物質を含まない農産物を作ることが目的なので、最初から『農薬や化学肥料は絶対に使わない農業をやる』と決めてました。
そうして、著名な有機農家の方のノウハウを教わりに行ったり、いろいろな本を読んで勉強したりして、
いろいろ試行錯誤を繰り返しながらやったんですけれども、なかなかうまくいかない。
ある程度の覚悟はしてたんですが、農薬や化学肥料を使わない農業がこんなにも難しいものかと、本当に思い知らされました。
スタートしてから3年間くらいは失敗につぐ失敗の連続でした。
およそ人様に買ってもらえそうなモノはほとんど出来なかったんですね。
農薬を一切使わないことで、様々な害虫の被害が出まくりましたし、いろんな病気の発生にも悩まされました。
また、化学肥料も使わないので、思うように作物が大きくならないわけです。
正直なハナシ、『ここで農薬が使えたら、化学肥料が使えたら、どんなに楽やろなぁ』と
思ってしまうことも一度や二度ではなかったです。
その度に、もしそんなことしてしもたら、自分がわざわざ建築をやめてまで農家になった意味がないやろ!と、まぁそうやって自分に言い聞かせながらやってきました。
『捨てる神あれば拾う神あり』なんて言いますけれども、
やればやるほど年々赤字ばっかりが膨らむ一方で、唯一ええことがあったんですね。
それは何かといいますと、自分自身が農業をやる以前に比べてびっくりするほど元気で健康になったということです。
その原因はズバリ、食生活の変化やったんですね。
農家になる前は普通に何も考えずに基本的にはスーパーで買ってきたものを食べてたんですが、農業を始めてからは、当然ながら自分で作った米とか野菜が主食になるワケです。
野菜なんかは売り物にならんような見栄えの悪いヤツを捨てるのがもったいないから
食べるんですが、
農薬も化学肥料も使わずに土と微生物のチカラで育ってますから、究極に安心・安全なうえに、スーパーで普通に売られている野菜に比べてビタミンやミネラル成分などの栄養価がめちゃくちゃ高いわけです。
そんな食生活をする中で、そういえば自分の体が以前とは全く変わってるよなと、実感したタイミングがありました。
よく考えてみると・・例えば、しょっちゅう起きてた立ちくらみが無くなってたり・・
年に2回くらいは熱出して寝込んだりしてた風邪も全くひかなくなってたり・・
もともと弱かった胃腸の調子が知らん間に強くなって便秘や下痢をしなくなったり・・
時々できていた面疔とか口内炎もできなくなったりとか・・
気が付けば持病の腰痛まで、全く出なくなってたんですね。
とにかく何となくずっと感じていた体のダルさとか、疲れやすさとかが完全に無くなった感じです。
おまけにこれはまぁ農作業で以前より運動量が増えたこともあるとは思いますが、当初は70キロぐらいあった体重が10キロ以上も減って、最近では60キロ切ってるんですね。
私の年齢は60歳でもう還暦なんですが、20台の若い頃から40歳くらいまでは
ずっと今と同じくらいの体重やったんで、何か若返った感じでですね、ほんまに身体が軽くなりました。
そんなこんなの自分自身の経験もあってですねぇ、
ホンモノの食べ物は絶対に人を健康にする力があるんやなと、
これはもう自信を持って言えますね。
まぁ考えてみたら、人間の体というのは細胞から血液から臓器まで、
全部食べたもんで出来てるんで、当たり前と言えば当たり前なんかもしれませんけどね。
ということで、今回はなぜ私が農家に転身した理由と、その後経験したことなどをザっとお話させていただきましたけれども、そろそろこの辺で終わりたいと思います。
ありがとうございました!